経済学を味わう(市村英彦,他編)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2021.08.01

書名 「経済学を味わう : 東大1、2年生に大人気の授業」
著者 市村英彦,岡崎哲二, 佐藤泰裕, 松井彰彦
出版者 日本評論社
出版年 2020年4月
請求番号 331/1117
Kompass書誌情報

経済学をわかりやすく説明しようと試みた一般書は数多いが、経済学は基礎から積み上げて勉強する学問であるため、入門者が経済学の分析対象の広さやその面白さを実感することは難しい。私自身、学部3年生以上の講義で公共経済学や実験経済学を学び、今まで学んできた経済学はそういうことだったのかと妙に納得し、社会問題に広く応用できることに感心した。と同時に、もう少し早く知りたいとも思った。

経済学の思考の枠組みやものの見方で、どのような問題を取り扱うことができるのだろうか。そうした問いに対して、経済学の各分野の第一線で活躍してきた研究者が答えたのが本書である。第2章の公共経済学では、ふるさと納税をめぐる自治体間の返礼品競争の問題を扱っている。第4章の実証ミクロ経済学では、カナダ?ケベック州の保育改革の事例を通して、保育園の整備状況と母親の就業率に因果関係があることを示している。第10章の経済史では、アフリカから送られた奴隷の人数と、現代アフリカの貧困との因果関係の研究を紹介している。このように、政治、福祉、歴史といった問題までも、経済学は守備範囲としているのだ。

高校生や大学初年次に経済学の研究の姿を少しでも知ることができれば、進路選択の幅を広げることができるし、入学後の学習の励みになるだろう。受験生に寄り添う保護者や高校教員にも一読することをお薦めする。

グローバル?メディア?スタディーズ学部 講師 星野 真

< 前の記事へ | 次の記事へ >