その他部活動

DATE:2025.04.23その他部活動

ティモンディ前田裕太さん インタビュー後編

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下積み時代について話す前田裕太さん(撮影?前田琴音)

4月1日発行の第115号で新入生に向けてエールを送っていただいたお笑いコンビ?ティモンディ前田裕太さん。紙面では掲載しきれなかった部分を含めた拡大版の後編をお届けします。

――前田さんの学生時代の夢や目標は
「学生時代は法曹界で働くことが夢だった。なぜ法曹界かというと、法学が肌にあったということと勉強している中で友人と法律の研究でああだこうだ言っていることが楽しかったこと。それと人に『ありがとう』と言われて嬉しかった経験がアルバイトなどであったから『ありがとう』を直接言ってもらえる職業がいいなと思った。例えば、プログラマーといった職業もやりがいはあると思うし、収入も高いと思うが『ありがとう』と直接消費者の方から言われる仕事かといったらそうではないと思う。僕の肌としては直接悩みを聞いて僕と一緒に戦っていきましょうという方が肌に合っていたため弁護士を目指していた。気付いたら32歳で野球の仕事や段取りをするような仕事になってはいるが(笑)」

――芸人になったきっかけは
「誘われたから。その年ごとに自分の中で今年はこういう年にしようと目標を決めていた。大学4年次の時はせっかくの4年間で、しんどいからなどという理由でいろいろな誘いを断り続けてきたことをもったいなかったと思っていたため、誘われたら全てYESと言おうという時期だった。そんな中で、高校の同級生の高岸(宏行)に誘われて大学を卒業する時に芸人をやろうと決めた。大学院に行くことにはなっていたが、楽しそうだし大学院に行きながらでもやってみようと思った。楽しそうだと思ったら何でもやってみた方がいいと思う」

――法律の勉強とお笑い芸人を天秤にかけてお笑い芸人の方が楽しかったということか
「そうですね。最初の1年くらいは大学院に行きながらどっちもやっていた。大学院に行きながら、ネタを書いて、ライブに出てというような生活をしていた。たぶん、生活をする上で永久的に安定する仕事は弁護士になる方。だが、楽しいと思えていたのは舞台上にいるとき。お客さんが2人しかいない中でネタを披露するときもあった。その時の方がワクワクもしたし、楽しかったし、悔しかったし、感情がとても動いた。みんな、80歳くらいで死ぬと思うが、そこまで永遠と働き続けるのかというと恐らくそうではない。何十年とずっと苦しい思いをして働いて、たくさんの貯金を蓄えて60歳から大金を使えるとなってもうれしくない。60歳から5000万円をもらうより、今100万円をもらった方が使えるし、エネルギーもあるから絶対にうれしい。日本人の美徳として我慢することが偉いというような節があるが、それは好きなことや楽しいと思えることが前提なのではないかと思う。あと50年と思っていてもあと20年で死ぬかもしれないし、それは分からない。だったら楽しいと思えることの中で苦労した方が良いと思う。だから、僕としては楽しいなと思った方(お笑い芸人)に自然と寄っていってしまった。特待生で大学院に入ったが、出席日数が段々と減るという事態になり、志高く大学院に入ったのに出席日数が少なくなる人はあまりいないよと言われた(笑)」

―― お笑い芸人の下積み時代など、苦労された時期にも本に支えられたのか
「お笑い芸人の下積み時代の支えは、やはり衝動というか楽しいという気持ち。もはやゲームと一緒。普通はめんどくさいと感じるレベル上げも、好きなキャラクターだったら全く苦ではないというのと同じで、お金の面では苦労はしたが、そのほかの苦労は意外と無かった。カップ麺を15分お湯を入れた状態で放置して、かさばらせてお腹いっぱいにさせるというような生活をしていた。電気とガスと水道が止まった時期もあり、ただ小屋のようなところに帰りに行き、災害時用の携帯発電機で毎日充電して大学院に持って行って充電してというような時期もあったりした。物理的な苦労はたくさんあった。電車代がなく3時間歩きオーディションに行き、落ちてまた3時間歩いて帰ってくるというようなこともあった。だが、やはりベースは楽しいということ。肉体的な苦労はかなりあったが、精神的な苦労は正直下積みの時期には無かったと思う」

――下積み時代はということは、 テレビ出演など露出が増えてからの方が苦労が多いということか
「そうですね。資本主義のお金を稼ぐという目的のもと、動かなければいけなくて、みんなも大学生から社会人になると、お金を稼ぐ、商品を売るということがベースになってくると思う。お金を稼ぐことだけに幸せを得ることができるかというと、最初の瞬間はうれしいかもしれないが、そのために好きじゃないことに対しても頑張らなければいけない。その好きじゃないもので頑張ったが評価を得られず怒られたりもする。それでも頑張らなくてはならない。下積み時代と比べると好きなことばかりやればいいというわけではなくなる。そのような意味では、忙しくなった時の方が精神的な負荷がありましたね」

――さまざまな活動をしているが、その中で一番楽しい?幸せな瞬間というのはどこにあるか
「やはりベースとして変わっていないと思うのが法律家になろうと思ったのも、目の前の人がありがとうと言ってくれるようなことを人にしてあげられた自分というものが僕の中で許容できるから。何もないと思っていた自分が人に対して影響を与えられたというところに仕事の達成感がある。だから、ライブでスタッフさんが直接『面白かったです。ありがとうございました』と言ってくれた時やまた仕事したいと思ってもらえたりすると達成感がある。自分が何を快楽?うれしい?幸せだと思うのか、社会の中での自分の感覚というところは大学生の時と変わっていないのかなと思う。そういったことがやりがいなので、仕事でももちろんラジオでは自由なことを喋れるとか、 テレビではたくさんの人に観てもらうといった側面があるが、ベースはどの仕事でも人に『ありがとう』と言ってもらえるところ。ライブもそうだが、そう言ってもらえる現場が好き。そうではない現場はあまり好きではない。ロケが好きではないかと言われるとそうではないが、ロケは意外とカメラマンのみのことも多く、『ありがとうございました』だけで終わると味気ないなと感じる。自己実現ができているなと思えるのは、直接言い合える仕事の時かなと思う」

――ネタ作りの際に意識している点は
「面白いネタを自分たちと中川家(剛?礼二)さんがやったら、絶対に中川家さんの方がうまくできる。逆に言うと面白くないネタを自分たちがやったら面白くないし、面白くないネタを中川家さんがやったら面白くできる。どちらかというと自分を分かっているというか、 自分がどのように言うとこの言葉は面白く聞こえるか。中身はすごく大事だし、台本がいいネタはあるが、究極なところ芸事というのはその人に合っているかだと思う。自分が何を言ったら面白いか、高岸が何を言ったら面白いかみたいな人間性と見た目に合う台本だったり、言葉選びをするとそれほど大したことじゃなくても笑える。人間性と芸が合うかを1番考えましたね」

――芸人として1番大切にしていることは何か
「芯を持つこと。芯とは何かというといろいろな需要があって、その需要全てに応えようとすると自分が何者か分からなくなる。世の中にいる人はみんな良い人だから悪意のない押し付けがかなりある。よりよくなればいいなくらいの気持ちで言ってくる。交友関係など何にでも言えることだとは思うが、いろいろな需要を言われても自分は一人だし、できることには限りがある。全てに対応できる気もするんですけど、していたら疲弊してしまう。自分自身ができるものと自分という人間を見たときにやろうと思ってもできないものもある。自分やオードリー若林(正恭)さんがリアクション芸を頑張っても全然笑われない。これはやりたくてもできないものだから仕方ない。できるものと、やりたいけどできないものと、やりたくてできるものと、やりたくはないけどできはするものという4つは把握しておくと良い。自分を幸せに生きさせてあげるという芯の下、その4つをいろいろと考えながら仕事だったり、私生活だったりを考えるということが自分の中の信条?信念かなと思う」

――来年で結成10周年を迎えるがコンビとして、自身としての目標は何か
「10周年だからと言って大きく変えることはない。人生という点と仕事という点を分けて、仕事が全てだと思わないようにしなくてはならないと思っている。高岸は結婚して、子どもも生まれてという中でプライベートを充実させてあげたいという思いがある。仕事が忙しすぎてもせっかく子どもが生まれたのにもかかわらず、子どもとの時間が確保できないというのは友達として申し訳ないなと思う。10周年の目標は単独ライブなどと言うと響きは良いが、「ライフバランスを整える」ことを目標にやっていきたい。高岸が人生を充実させる時間だとすれば、僕は仕事を充実させる時期かなと思うので、やったことのない仕事も含めていろいろな仕事をしていきたいなと思う」

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新入生に力強いメッセージを送った前田裕太さん(撮影?前田琴音)

――新入生に向けてメッセージ
「不安は取り除くべきものでもないし、それが糧になるみたいなところもある。レベル1のモンスターしかいないゲームが何も楽しくないのと同じで、不安のない人生は逆に何も楽しくない。わくわくして大学生活に入ってきたとしても、思っていたのと違うなという瞬間はある。その中にある『自分の思っていたものよりも足りないな』や『寂しいな』みたいな飢餓こそが大学生活の醍醐味だと思う。スマホにあまり時間を取られずにたくさんの無駄をして、人として成長できる4年間を送ってほしい。無駄の中に本当の自分の好きなものがあるのではないかと思うのでそれを見つけてほしい。みんながマイナスだと思っていたものがプラスになるのが大学生活かなと思う。負の感情の中で見つかるもの、救われるもの、楽しいなと思えたものが人生の視点にもなるので、負の感情がそのまま悪いことだと思わないようにしてほしいです」

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お笑いコンビ?ティモンディ前田裕太(左)と高岸宏行(右)(提供?グレープカンパニー)

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ。神奈川県出身。グレープカンパニー所属。2015年1月1日、済美高(愛媛県)の同級生であった高岸宏行(32)とお笑いコンビ?ティモンディを結成。同年3月、駒大法学部卒業。お笑い番組への出演にとどまらず、子ども向け番組のMCや本の執筆など幅広い芸能活動を行っている。

聞き手:菅原稜太?蓮見あい

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