糸魚川大火(2016年12月22日)

 2016年12月22日10時20分頃、糸魚川市大町1丁目で発生した火事は、南からの強風のあおられ大火となりました。糸魚川市対策本部の発表によると、焼失面積は約4万平方メートル。焼損面積は30,412平方メートル。被害建物は147棟(全焼120棟、半焼5棟、部分焼22棟)に及びました。総務省消防庁によると、火災の規模は過去20年で最大であり、一般家屋を含む火災では、1976年10月29日の山形県酒田大火(類焼22.5万平方キロ)以来です。

被災エリア写真

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報道の空撮写真を参考にしつつ、延焼範囲を地図上に描きいれたものです。糸魚川市が発表している被災区域図とは少し違います。現地調査はしていません。火元(×)となった中華料理店のすぐ南側(風上側)の建物は焼け残っているようです(屋根が確認できるものの、壁は焼けているかもしれません)。火の粉が飛んで、離れた場所で新たな火災が発生したとの報告もあります。延焼範囲は連続している様子です。また、道路や駐車場が防火帯の役割を果たしたり、鉄筋コンクリートの建物が防火壁として機能したり、延焼が食い止められた形跡もありました。

強風の原因

図の上にマウスをもっていくと、風系の流線がかさなります。
強い南風を吹かせた主原因は、日本海低気圧です。糸魚川のみならず、各地で強い南風が吹きました。北陸では、石川県金沢で最大瞬間風速25.6m/s(南南西)、石川県白山河内で24.7m/s(南西)、富山県上市で26.8m/s(東南東)、富山県秋ケ島で25.2m/s(南)を観測しました。新潟県糸魚川は24.2m/s(南)です。(天気図は気象庁)

糸魚川の気象

糸魚川では、午前2時頃から南寄りの風となり、30分程度で急速に強まりました。同時に気温も急上昇しているので、フェーン現象が起こっていたとみられます。火災が発生した10時半頃には、平均風速で13m/s、最大瞬間風速で20m/s前後の強風となり、夜7時頃まで持続しました。この日の最高気温は、20.5℃と12月下旬としては異例の高温となりました。延焼が広範囲に及んだのは、強風が持続したことによります。アメダス糸魚川における最大瞬間風速は24.2m/s(12時9分)、糸魚川消防本部における最大瞬間風速は、27.2m/s(南南東、11時40分)でした。

 

過去の強風事例

発生日 時刻 最大瞬間風速 風向 気圧配置(最大瞬間風速出現時) 糸魚川における過去の強風事例を
拾い出してみました(24m/s以上)。

統計期間は
2009年3月~2016年12月と短いで
すが、25例もありました。

ちなみに同じ期間の東京は16例、
名古屋は7例、大阪は2例です。
糸魚川は強風頻度が高いようです。

今回のように
低気圧や台風が日本海にあり、
糸魚川が低気圧の南側に位置する
気圧配置パターンが多いようです。

また、日本海に低気圧があって、
寒冷前線が通過後に
最大瞬間風速を記録した事例も
複数あります。
2009年3月13日 23:56 24.7m/s 南東 日本海低気圧?暖域
2010年4月27日 20:41 29.0m/s 南東 東高西低?気圧の谷接近
2010年5月24日 0:39 25.4m/s 南東 山陰沖低気圧接近
2010年12月3日 14:44 25.9m/s 西南西 秋田沖低気圧
2012年1月25日 8:14 25.1m/s 南南西 日本海小低気圧
2012年4月3日 13:49 29.1m/s 南南東 日本海低気圧?暖域
2012年4月4日 1:28 24.6m/s 西 日本海低気圧?前線通過後
2012年12月8日 13:40 24.0m/s 西南西 東北北部低気圧?前線通過後
2013年4月6日 22:03 27.1m/s 北陸沖?紀伊半島低気圧
2013年11月25日 9:13 25.1m/s 北朝鮮沖低気圧?暖域
2014年12月2日 1:50 25.2m/s 西 日本海北部低気圧?前線通過後
2014年12月22日 18:49 25.7m/s 南西 西高東低?南偏高気圧
2015年3月12日 2:21 26.7m/s 南西 日本海北部低気圧?南偏高気圧
2015年4月3日 8:18 25.5m/s 日本海低気圧?暖域
2015年4月13日 19:08 26.0m/s 東高西低?低気圧接近
2015年4月20日 9:50 24.0m/s 日本海低気圧?暖域
2015年8月25日 22:01 30.0m/s 南南東 台風15号日本海北東進
2015年8月26日 0:56 27.4m/s 南南東 台風15号日本海北東進
2015年11月14日 12:00 25.8m/s 東高西低?日本海小低気圧
2016年4月17日 12:47 31.3m/s 日本海低気圧?前線通過後
2016年5月3日 22:21 26.3m/s 南南西 北朝鮮低気圧?暖域
2016年5月4日 1:17 24.1m/s 北朝鮮低気圧?前線通過
2016年10月5日 23:34 24.7m/s 西 台風由来温帯低気圧?暖域
2016年12月22日 12:09 24.2m/s 日本海低気圧?暖域

 

強風発生時の気圧配置

糸魚川の強風は、日本海で低気圧が発達する"暖気流入型"の気圧配置で発生する場合が多いのですが、西寄りの強風については、"寒気流入型"で発生する場合もあるようです。

日本海に低気圧や台風があって、北東~東北東に進むタイプで、糸魚川強風の典型的な気圧配置です。


北陸付近の等圧線の走向が南西から北東となり、等圧線間隔がせまくなっています。

春一番が吹くときの天気図の形です。
東高西低型の気圧配置です。


日本海に低気圧がなかったり、それほど発達しない場合でも、糸魚川で強風が吹く場合があります。

北陸付近の等圧線の走行は、南西から北東となって、等圧線間隔がせまくなっています。
北海道付近に、空間規模の大きな低気圧があって、寒冷前線が通過して約半日後のパターンです。

北陸付近の等圧線の走行は北西から南東で間隔も狭くなっています。


糸魚川では降水を伴って、西寄りの強風になりやすいタイプです。
大局的に見れば、西高東低の冬型の気圧配置ですが、高気圧が南偏しているパターンです。

北陸付近の等圧線の走行は北西から南東で間隔も狭くなっています。

糸魚川では降水を伴って、西寄りの強風になりやすいタイプです。

 

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