松山城土石流(2024年7月12日)
2024年7月12日午前3時50分頃、松山城址北東側の谷で土石流が発生しました。
松山市緑町1丁目では、土砂により民家が破壊されるなどの被害が出ています。
4時20分頃、4時50分頃にも土石流が発生しているようです。
また、「マンション8階まで立ち木が飛ばされてきた」ようです。

空中写真および3D俯瞰図は地理院地図(こちら)を用いて作画したものです。

赤で示した土石流範囲の面積は9731m2、下部の堆積範囲は4943m2程度とみられます。
(現地調査によるものではなく大きな誤差を含む推定)
土石流範囲のKML(こちら
作図にあたりWEB報道(南海放送7月12日10時20分)を参考にしました。

 

谷の源頭部である松山城艮門東続櫓近くの道路脇が崩落の最上部のようです。
土石流のストロークは水平距離で300m程度とみられ、
熱海伊豆山土石流(2000m)より短いようです。
谷の勾配は18.8度位で、熱海伊豆山土石流(約11度)より急であったようです。

報道によると、源頭部には擁壁があり、2023年7月の雨で傾いていたようです。
また2024年6月下旬の雨で保守管理道路に10mの亀裂ができ、20㎝陥没していたとのことです。

 

重ねるハザードマップを参照すると、松山城周辺の斜面は、土砂災害警戒区域(黄)?土砂災害特別警戒区域(赤)に指定されていたことがわかります。ただ、急傾斜地の崩壊を想定したものであり、土石流を想定したものではありません。また、谷の源頭部は警戒区域ではなかったようです。

 

愛媛大学による現地調査速報(こちら

源頭部について緊急の調査が行われ、速報として公開されています。
源頭部の斜面崩壊の形態としては表層崩壊だったようです。
土砂災害のプロセスとして、
①風化砂岩からなる厚さ1~2mの表層が崩壊
②崩土が樹木(流木)とともに流下
③少し遅れて、泥濘下した土砂と流木が、防護ネット等を乗り越えた
という指摘がなされています。
報告は速報であり、今後詳細な調査により、メカニズムが明らかになると思われます。

(参考:松山市城山斜面崩壊?緑町土砂災害 愛媛大学専門教員合同調査グループ)

 

(降水量および注警報データは気象庁発表のもの、避難情報は松山市が発表したもの)

松山における年降水量平年値は1404.6㎜です。この1割(140mm)が24時間で降ると、災害が起こってもおかしくないと考えられます(かつての大雨警報基準の考え方)。前日(11日)の午前中に半日で124mmの雨が降っており、大雨災害の危険度が高まったため、大雨警報が発表されました(11日3時38分)。前日昼前には雨は止み、大雨注意報に切替られました(11日10時19分)。
その後、11日夜から再び雨が降り出しましたが、最も雨が強まった時でも25.0㎜/h(12日0時44分)であり、災害を予感させるほどの激しい雨ではなかったのかもしれません。
大雨警報(12日4時32分)、緊急安全確保(12日5時00分)、土砂災害警戒情報(12日7時00分)は、いずれも発災後(土石流が麓に到達した3時50分以降)に発表されたものです。徐々に防災意識を高めていくタイムライン的な対応では、逃げるのは難しかったと考えられます。
発災直前の雨量は約70㎜程度です。まったくの想像ですが、前日の雨を原因として谷の上部で斜面崩壊が起きて土砂ダムが形成され、深夜から未明の強い雨で土砂ダムが決壊し水分量の多い土石流が麓を襲ったのかもしれません。

 

(天気図画像は気象庁による速報天気図)

日本海まで北上していた梅雨前線がゆっくり南下する過程で、前日午前中の雨が降りました。その後、四国付近に停滞する前線上を小低気圧が近づき、前夜から当日の朝に雨を降らせました。