令和元年東日本台風
(~令和元年大水害~2019年台風19号)

【大雨特別警報と24時間雨量】

2019年台風19号は10月12日19時前に伊豆半島に上陸し、中心は関東から福島県を北東に進みました。
大雨特別警報が13都県の144市117町41村5特別区に発表されました。(2015年以降最大エリア)。
発表市町村の面積は合計61,165km2、発表市町村の人口は合計2352万2512人に及びました。
日本人の5人に1人が、50年に一度の大雨となった市町村に居住していたことになります。

*長野県松本市のうち乗鞍上高地地域には発表されていない。長野県塩尻市のうち楢川地区には発表されていない。人口は2015年国勢調査

静岡県東伊豆町から岩手県洋野町まで特別警報地域は連続しています(両町の距離は直線で668km)。
台風経路に近い山沿いを中心に、例外なく50年に1度の記録的な大雨となったことになります。

特別警報平面地図  特別警報kmlファイル  

24時間降水量平面地図   24時間降水量kmlファイル

24時間降水量地理院地図(動作が重い)

地図はMANDARA、カシミール3Dで作成しました。
標高値は国土地理院50mメッシュ標高、気象データは気象庁公開値を利用しています。
都県-地点                  24時間雨量   平年の
年降水量比
左表の地点で、
天城山と阿児は、10月として1位の記録
それ以外は観測史上1位の記録です。

箱根雨量は、
日雨量としては922.5mmとなりますが、
これは、アメダス観測点では、
歴代1位の日本記録となります。
日本では経験したことのない大量の雨が
降ったと形容してもいいと思います。

箱根登山鉄道は年内の復旧は難しいと
報道されています。

平年の年降水量の1割の雨が
24時間で降ったら
土砂災害や洪水が発生する危険度が
高まると言われます。

かつては大雨警報の目安とされていました。
左表の地点では1割どころか、
2割、3割を超えているところがあり、
宮城県の筆甫では4割に達しています。
その丸森町では大きな被害が出ています。
(死者4名、不明3名、土砂崩れ150か所)

雨量の記録を更新した地点
  観測史上1位 10月1位
1時間雨量 9地点 112地点
3時間雨量 40地点 155地点
6時間雨量 89地点 211地点
12時間雨量 120地点 249地点
24時間雨量 103地点 231地点
48時間雨量 72地点 201地点
72時間雨量 53地点 178地点

アメダス観測点は全国で1298地点
(24時間雨量では1地点欠測)
多くは1976年より観測がはじまっています。
神奈川-箱根 942.5mm 12日 21:00まで 27%
静岡-湯ケ島 717.5mm 12日 18:50まで 26%
埼玉-浦山 647.5mm 12日 22:00まで 38%
東京-小沢 627.0mm 12日 21:20まで 38%
静岡-梅ケ島 613.5mm 12日 20:00まで 20%
神奈川-相模湖 604.5mm 12日 21:20まで 36%
宮城-筆甫 588.0mm 13日 3:50まで 40%
埼玉-ときがわ 587.0mm 12日 22:10まで 35%
東京-小河内 580.0mm 12日 21:20まで 36%
埼玉-三峰 561.5mm 12日 21:40まで 35%
静岡-御殿場 547.5mm 12日 20:10まで 19%
山梨-南部 546.5mm 12日 20:10まで 22%
静岡-天城山 535.5mm 12日 20:20まで --
神奈川-丹沢湖 527.0mm 12日 20:50まで 24%
埼玉-秩父 519.0mm 12日 22:00まで 39%
山梨-上野原 483.5mm 12日 21:20まで --
栃木-奥日光 482.0mm 12日 23:10まで 22%
埼玉-寄居 475.5mm 12日 22:10まで 37%
群馬-西野牧 474.5mm 12日 22:40まで 37%
茨城-花園 457.0mm 13日 0:40まで 23%
埼玉-上吉田 445.5mm 12日 22:00まで 36%
群馬-神流 442.5mm 12日 22:00まで 36%
福島-川内 441.0mm 13日 1:40まで 30%
岩手-普代 437.0mm 13日 6:10まで 31%
山梨-大月 429.5mm 12日 20:30まで 31%
栃木-足尾 425.0mm 12日 23:00まで 24%
宮城-丸森 421.0mm 13日 2:20まで 33%
山梨-切石 417.0mm 12日 20:10まで 26%
岩手-小本 416.0mm 13日 6:50まで 29%
群馬-田代 416.0mm 12日 21:10まで 28%
静岡-菊川牧之原 415.0mm 12日 19:10まで 19%
栃木-塩谷 414.0mm 13日 2:50まで 25%
静岡-静岡 412.0mm 12日 19:10まで 18%
栃木-葛生 410.0mm 13日 1:20まで 28%
三重-阿児 409.0mm 12日 18:40まで 21%
東京-八王子 409.0mm 12日 21:30まで 26%
群馬-榛名山 405.5mm 12日 22:30まで 19%



【台風上陸直後の雨雲の様子】

1時間雨量分布図(12日18時30分~19時30分)
台風前面の南東からの暖湿気が、山地による強制上昇で雨雲を活発化させたとみられます。
アメダス箱根では18時30分~19時30分の1時間に76ミリの非常に激しい雨を観測しています。
(日最大1時間雨量は85.0mm、19時21分、1976年以降で1位)
なお、気象レーダーと雨量計計測値から推定される1時間雨量は、
19時30分までの1時間に箱根町周辺で100ミリと推定されています。

【千曲川の氾濫】

長野市穂保地区で千曲川左岸が破堤しました。北陸新幹線の車両基地(線の字の右あたり)も冠水しました。千曲川が長野盆地から出ていくところ(新潟県では信濃川と名前が変わる)で、山からの支川が集まってくる場所でもあります。国道?高速道路など主要交通網が集まっている場所でもあります。

治水地形分類図

国土地理院地形図、川だけ地形図を背景で利用しています。国土地理院の浸水範囲解析を参考にカシミール3Dで作画しました。


国土地理院空中写真

(13日11時39分)

 

氾濫危険水位を±0として、上流から上田→千曲→長野→中野の水位データを重ねたものです。
大雨の際によくみられることですが、下流ほどピーク時刻が遅くなり、ピークが高くなっています。
57.4k地点(長野市)では、22時30分に氾濫危険水位に達しました。
この地点で堤防天端を超えたとみられるのは0時20分です。
長野志保穂での氾濫発生は1時10分(千曲川事務所資料では1時15分)でした。

【阿武隈川の氾濫】

阿武隈川流域では、堤防の決壊、越水、内水氾濫が発生しました。宮城県内の下流域では、その浸水域が9200haにもおよんだようです(内閣府資料10/20)。ちなみに山手線の内側の面積が6300haです。角田盆地では、周囲の山地からの雨水によって、阿武隈川の支流が各所で氾濫し、広範囲が冠水したことがわかります。

治水地形分類図

国土地理院地形図、川だけ地形図を背景で利用しています。国土地理院の浸水範囲解析を参考にカシミール3Dで作画しました。

 

【都幾川?越辺川の氾濫】

都幾川、九十九川、高麗川は越辺川の支流で、その越辺川は入間川の支流、その入間川は荒川の最大支流です。
不老川、柳瀬川は新河岸川の支流でこれも荒川水系、びん沼川は荒川の旧河道です。、
東松山市から富士見市にかけて、国道254号線沿いの荒川低地が冠水したようです。

治水地形分類図

国土地理院地形図、川だけ地形図を背景で利用しています。国土地理院の浸水範囲解析を参考にカシミール3Dで作画しました。

【那珂川?久慈川の氾濫】

那珂川は栃木県北部を源流としています。久慈川は福島県が源流です。いずれも下流部で氾濫しました。
国土地理院によると、常磐道水戸北インター付近の浸水深さは7mを超えたようです。
報道されている情報も合わせて考えると、実際の冠水範囲は、上図より広いのではないかと思います。

治水地形分類図

国土地理院地形図、川だけ地形図を背景で利用しています。国土地理院の浸水範囲解析を参考にカシミール3Dで作画しました。

 

【氾濫発生河川?指定河川洪水予報による】

情報発表時刻 河川名 水系 市町村 氾濫地点 右/左岸
10月12日 19時40分 都幾川 荒川水系 埼玉県東松山市 都幾川6.0? 左岸
10月12日 21時10分 福島県宇多川   福島県相馬市 北飯渕 左岸
10月12日 21時10分 福島県宇多川   福島県相馬市 今田 右岸
10月12日 21時45分 秋山川   栃木県佐野市 赤坂町 右岸→破堤
10月12日 22時20分 多摩川   東京都世田谷区 玉川地先 左岸
10月12日 22時30分 田川   栃木県宇都宮市 大通り4丁目(宮の橋上流) 右岸
10月12日 22時30分 福島県新田川   福島県南相馬市 原町区大谷 不明
10月12日 22時30分 福島県新田川   福島県南相馬市 原町区北新田 右岸
10月12日 22時30分 竹林川 鳴瀬川水系吉田川支川 宮城県富谷市 三ノ関字馬場沢下地先 右岸
10月12日 23時55分 千曲川 信濃川水系 長野県長野市 篠ノ井小森75k 左岸
10月13日 00時10分 阿武隈川   福島県須賀川市 江持 右岸
10月13日 00時20分 栃木県荒川 那珂川水系 栃木県那須烏山市 向田(荒川橋) 左岸
10月13日 00時20分 石田川 利根川水系 群馬県太田市 石田川5.6k 左岸
10月13日 00時40分 福島県夏井川   福島県いわき市 小川町高萩地内 右岸
10月13日 00時50分 阿武隈川   福島県郡山市 阿久津橋下流 右岸
10月13日 01時15分 千曲川 信濃川水系 長野県長野市 穂保地先 左岸→破堤
10月13日 01時20分 阿武隈川   福島県本宮市 中條 左岸
10月13日 01時40分 阿武隈川   福島県郡山市 石渕町(行合橋) 左岸
10月13日 02時00分 永野川   栃木県栃木市 大平町榎本外 左岸
10月13日 02時03分 千曲川 信濃川水系 長野県須坂市 相之島地先 右岸
10月13日 02時03分 千曲川 信濃川水系 長野県小布施町 飯田 右岸
10月13日 02時58分 千曲川 信濃川水系 長野県小布施町 山王島地先 右岸
10月13日 03時25分 千曲川 信濃川水系 長野県中野市 立ヶ花 右岸
10月13日 03時25分 千曲川 信濃川水系 長野県中野市 栗林 右岸
10月13日 04時25分 蛇尾川 那珂川水系 栃木県大田原市 北大和久(千丈橋下流) 左岸→破堤
10月13日 05時20分 久慈川   茨城県常陸大宮市 小倉 左岸
10月13日 05時20分 久慈川   茨城県常陸大宮市 富岡地先 左岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県松島町 竹谷地先 左岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大郷町 粕川字丸山地先 右岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大郷町 土橋地先 右岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大和町 落合桧和田地先 左岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大崎市 鹿島台大迫下志田地先 左岸
10月13日 06時25分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大和町 志戸田字平成北地先 右岸
10月13日 06時30分 阿武隈川   福島県伊達市 五十沢 左岸
10月13日 08時40分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大郷町 粕川字伝三郎地先 左岸
10月13日 09時00分 都幾川 荒川水系 埼玉県東松山市 都幾川0.4k 右岸
10月13日 09時00分 越辺川 荒川水系 埼玉県東松山市 越辺川7.6k 左岸
10月13日 09時00分 越辺川 荒川水系 埼玉県坂戸市 越辺川0.0k 右岸→破堤
10月13日 09時40分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大崎市 鹿島台字広長地先 右岸破堤
10月13日 09時40分 吉田川 鳴瀬川水系 宮城県大郷町 鵜崎字袋地先 右岸
10月13日 10時20分 阿武隈川   福島県須賀川市 和田 左岸
10月13日 13時20分 阿武隈川   福島県郡山市 田村町御代田字古町 右岸

【東京都?埼玉県発表の情報による氾濫河川】

新河岸川 荒川水系 埼玉県川越市
不老川 荒川水系 埼玉県狭山市
不老川 荒川水系 埼玉県入間市
入間川 荒川水系 埼玉県入間市
江川 荒川水系 埼玉県桶川市
谷沢川 多摩川水系 東京都世田谷区
浅川 多摩川水系 八王子市
秋川 多摩川水系 あきる野市

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