DATE:2016.07.05仏教行事のおはなし
盂蘭盆会
仏教学部 教授 石井 公成
盂蘭盆会は、日本では、火を焚いてご先祖をお迎えし、またお送りする行事となっています。しかし、インドでのもともとの行事は少し違っていました。
亡くなった近親を供養する点は同じですが、父母、祖父母、さらにその父母、という具合に世代を遡って先祖を供養するのではなく、亡き父母の供養が第一であって、遡る場合は、現世での父母、前世での父母、その前世での父母...という形で追善を行ったのです。
古代のインドでは、僧侶たちは普段はばらばらになって各地を歩きまわり修行したのですが、雨季には出歩きませんでした。泥水で覆われた道を歩くと、虫などを踏んで殺してしまう恐れもあったため、雨季には一個所に定住して3カ月間、経典などの学習につとめたのです。そして最後の日に、この期間に戒律違反をしなかったかどうか点検し合い、違反していた場合は懺悔しました。
つまり、この日は、僧侶が最も清らかで尊い存在となっている日ということになります。その日に、そうした僧たちにご飯や僧衣その他のものを布施して供養し、その功徳を振り向けることにより、餓鬼の世界に生まれた亡き父母などを救おうとしたのです。太陰暦を用いていた中国では、7月15日がこの日だとされました。
盂蘭盆という言葉については、死者が逆さ吊りにされて苦しんでいることを意味するといった解釈がよく聞かれます。しかし、最新の研究では、お米を意味する梵語 odanaの口語の形である olan(a)を音写した「盂蘭」と、そのご飯をのせる「お盆」のことと推定されています。
※ 本コラムは『学園通信323号』(2016年7月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。