DATE:2016.09.19仏教行事のおはなし
高祖降誕会
仏教学部 教授 熊本 英人
道元禅師は、仏教をなぜ学ばなければならないかについて、次のように説かれている。 「すでにうけがたき人身をうけたるのみにあらず、あいがたき仏法にあいたてまつれり」(『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)「出家功徳」巻)
人間として生まれたということは、とてもラッキー。さらにそこで仏教に出会ったということは、さらにラッキー。この超ラッキーを生かさなければならない。だから今ここで仏教に専念せよ、と道元禅師は言われる。
一個人が人間として生まれ、仏教と出会った。単にそれだけのことではない。自分の都合など超えて、人間のつながりの中に、仏教のつながりの中に存在していることの意味は何か。
人として生まれ、さまざまなものに出会う。それらはすべて一期一会、今、生きているからこそ出会えたものである。良いこともあれば悪いこともある。仏教の説く道は、そのような出会いに一喜一憂、ただ振り回されるだけではならない。出会いは自分の思いのみ で取捨選択できるものではない、ということ。
1200年1月26日(正治2年1月2日)、曹洞宗の高祖道元禅師が生まれた日。高祖降 誕会(こうそごうたんえ)として曹洞宗ではお祝いしている。
※ 本コラムは『学園通信320号』(2016年1月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。