DATE:2017.01.15仏教行事のおはなし
太祖降誕会
仏教学部 松田 陽志 教授
人の誕生日を祝うときには、その人に対して抱いている「親しみ」が基点となるはずである。「親しみ」とはその人とのつながり(縁)を大切に思い、その人の存在に対して感謝したいという思いである。
11月21日は、曹洞宗で開祖?道元禅師から四世代目の瑩山紹瑾禅師(1264 ~ 1325)の誕生日である。この日(旧暦?10月8日)を生誕の日と伝える記録は、江戸期寛文年間(1661~ 1673)以降であり、この日に太祖降誕会という法要を教団として行うようになったのは、太陽暦に換算した明治33年からである。また誕生年を文永元年(1264)とするのは、この数十年の歴史資料の分析を通じてである。教団は、太祖と仰ぎそのつながりの上にあることを確認してきた。
教団の存続と発展を願い、總持寺や永光寺を中心にして多くの門徒を後世につなげた瑩山禅師に対し、忌日に恩徳に報いんとする供養の法会は古くから行われてきたが、明治期以後、本学でも行われる太祖降誕会は、道元禅師の教えを嗣続せんとする人々にとって、瑩山禅師とのつながりの上に今在ることを意識し、その感謝の思いにより行われる。
身近な人の誕生日を祝いながら、心ひそかに念ずる「いてくれてありがとう」という思いである。
※ 本コラムは『学園通信324号』(2016年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。