DATE:2017.03.04仏教行事のおはなし
成道会
総合教育研究部 矢野 秀武 教授
12月8日。日本の仏教諸宗派では、この日を釈尊が悟りを開いた日として祝い、儀礼を行う。この行事を成道会(じょうどうえ)と呼ぶ。
日本では、釈尊の生誕を祝う降誕会もしくは灌仏会、入滅の日の行事である涅槃会の行事をそれぞれ異なる日に行うが、スリランカやミャンマー、タイ、ラオス、カンボジアを中心に広まる上座仏教では、降誕?成道?涅槃の出来事が奇しくも同じ日(現在では5月中旬の満月の日)であったとされ、併せて盛大な祭が営まれる。その祭をヴェーサーカ祭(スリランカではウェサック、タイではウィサーカなどと発音する)と呼んでいる。
13世紀に成立したタイ族初の王朝であるスコータイ王朝では、ヴェーサーカ祭を三日三晩にわたって盛大に執り行っていたと言われている。現代のタイでは、三日三晩の祝祭とまではいかないが、ヴェーサーカの日は休日となり、人々は寺院を詣でる。
また1999年には、「国連ウェーサク日」が国連で承認され、ヴェーサーカ祭は、世界中の仏教徒が祝う重要な日となっている。
成道会とヴェーサーカ祭。祝う日や行事の意味は異なるが、釈尊の悟りを世界史的出来事ととらえ、12月8日を迎えてみてはいかがだろう。
※ 本コラムは『学園通信324号』(2016年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。