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2017年7月 九州北部豪雨(2017年7月5日~6日)

大雨特別警報(福岡発表5日17時51分、大分発表5日19時55分)

紫色が「大雨特別警報」の発表時の範囲。2013年から「特別警報」が発表されるようになり、2017年から市町村単位となりました。府県程度の広がりで、50年に一度の大災害が懸念される時に発表されます。気象庁が発表する最上級の警報であり、「直ちに命を守る行動」をとるよう呼びかけられます。大雨が持続する場合、まず「大雨注意報」が、次に「大雨警報」、やがて「土砂災害警戒警報」と、段階的に発表され、50年に一度の判断基準を超えそうな時に「大雨特別警報」となります。特別警報が発表される段階では、すでに災害が発生している場合もあり、避難することが危険な場合には、現在地にとどまる判断も必要とされます。

土砂災害警戒メッシュ(福岡?大分)



気象庁WEBで公開された土砂災害の危険度を示す情報。

アメダス雨量と気象レーダーの観測などから、雨量分布を推定し、タンクモデルを用いて土壌水分を算出して、5キロメッシュの地図にしたものです。
濃い紫色のエリアについては、土砂災害(がけ崩れ、土石流、地すべり)がいつ発生してもおかしくない危険な状況と判断されます。

地域によって、斜面の起伏度や地質が違うことは、あまり考慮されていないようです。

個々のメッシュのランク境界値が違うため、数値が示されません。よって、情報利用者は、地図上の色を見て、フィーリングで危険度をつかむことになります。

浸水害危険度分布と 洪水警報の危険度分布(福岡?大分) *マウスをのせると図がかわります。

 「浸水害危険度分布」は、大雨による浸水危険度を地図化したものです。気象庁WEBにおいて、2017年7月から公開されるようになりました。
短時間強雨によって、道路が冠水したり、地下駐車場に雨水が流れ込んだりする浸水被害の程度を推定したもので、気象庁が考案した表面雨量指数の分布図です。
左図は、大雨特別警報が発表される直前のものです。朝倉市南部を中心に濃い紫(極めて危険)となっています。過去の浸水被害発生時に匹敵する状況と解されますが、危険度の数値が具体的に示されるわけではなく、利用者は、色をみて危険度をフィーリングでつかむしかありません。
「洪水警報の危険度分布」は、気象庁WEBにおいて、2017年7月より公開されるようになりました。中小河川についての洪水の危険度を水系図で表現したのが新しいところです。
規模の大きな河川(河川法の指定河川)については、やや太い線で表現されます。今回の災害で多発した大量の流木をともなう土石流を予想するものではありません。実際のところ、図中の川が紫になった頃には、避難が難しくなっていると思われます。

上図の凡例

気象庁が発表する大雨警報に関連する情報は、最新の研究成果を取り込み、より高度化しました。一方で、あまりにも複雑化して、一般の人にはわかりにくくなってしまった感があります。詳しい説明は(こちら)で閲覧できますが、普段から情報の意味を理解していないと、いざという時になかなか活用できないのではないでしょうか?なお、災害の空間規模を把握する場合には、とても有意な情報です。市町村で対応できる災害規模なのか、都道府県が迅速に動く必要があるのか、国が迅速に動くべき災害なのかを判断する際の情報として活用できます。救助活動の初動を早めることができます。

 

気象レーダー(5日15時~18時)

気象庁WEBの気象レーダーです。雨粒の反射から雨の降り方の強さを判定しています。福岡県全域で激しい雨が降っていたわけではありませんでした。福岡県中央部の筑前町、朝倉市、東峰村、大分県日田市にかけて、橙色の「激しい雨」、赤い色の「非常に激しい雨」、紫色の「猛烈な雨」が降り続いた様子がわかります。個々の雨雲は東に移動していますが、帯状の雨域全体の南北移動が乏しく、結果として同じ地域で激しい雨が降り続いたことになります。

可視画像(5日15時10分~18時)

人間の目に見える可視光線の雲画像です九州北部で活発な積乱雲が次々と湧きあがり、上空を巻雲で覆いながら、東の方向に広がっていった様子です。積乱雲が密集しているところは、白く濃密です。気象研究所によると、雲の高さは17kmまで達したようです。(国際線の飛行機の巡航高度が11~13km位です。)

土砂災害危険度(福岡?大分、特別警報解除時)

大雨特別警報解除時の土砂災害警戒判定メッシュ。福岡県?大分県の「極めて危険」なメッシュが、ほとんどなくなったことをうけて、大雨特別警報は解除されました。(一部地域は、大雨警報として継続)。熊本県内に濃い紫色の「極めて危険」なメッシュが複数ありましたが、新たな特別警報の発表にはいたりませんでした。(図は気象庁WEBで公開されていたもの)

タイムライン(朝倉市付近の予想と実況、注警報、防災行政など)

  雨量予測
(筑後地方/福岡県)
雨量実況(前1時間) 注意報?警報
(大雨関連)
朝倉市役所対応
記録的大雨短時間情報 アメダス朝倉 北小路公民館
5日 10時まで         9時32分、大雨注意報  
11時まで 10時21分、
情報01号40mm/h、100mm/24h(~6日12時)
         
12時まで            
13時まで     13時、88.5mm 13時、67mm    
14時まで 13時38分、
情報02号70mm/h、180mm/24h(~6日12時)
13時20分、約110mm 14時、46.5mm 14時、93mm 13時14分、大雨警報(浸水)  
13時40分、120mm以上 13時25分、土砂災害警戒情報  
15時まで   15時00分、120mm以上 15時、67.5mm 15時、124mm 14時03分、大雨警報(浸水?土砂災害) 14時10分災害警戒本部設置
14時15分「避難準備情報」発令
14時26分「避難勧告」市内全域
16時まで     16時、106.0mm 16時、114mm   15時30分「避難指示」三奈木、金川、福田、蜷城、立石
17時まで 16時38分、
情報05号100mm/h、200mm/24h(~6日18時)
16時20分、120mm以上   17時、39mm   16時20分「避難指示」松末
18時まで   17時40分、120mm以上   18時、97mm 17時51分、大雨特別警報 17時25分「避難指示」志波
19時まで 18時55分、
情報07号100mm/h、200mm/24h(~6日18時)
19時00分、120mm以上 19時、44.0mm 19時、68mm   18時07分「避難指示」甘木、馬田
20時まで     20時、59.0mm 20時、90mm   19時10分「避難指示」市内全域
21時まで   20時10分、120mm以上 21時、33.5mm 21時、82mm    
22時まで            
23時まで             
24時まで 23時08分、
情報08号70mm/h、200mm/24h(~6日24時)
         
6日 3時まで            
6時まで 03時54分、
情報10号80mm/h、250mm/24h(~7日03時)
         
9時まで 06時17分、
情報11号80mm/h、250mm/24h(~7日06時)
         
12時まで 10時51分、
情報12号70mm/h、200mm/24h(~7日12時)
         
15時まで 14時13分、
情報13号50mm/h、150mm/24h(~7日15時)
      14時10分、大雨特別警報解除、大雨警報(土砂災害)継続  
18時まで 16時38分、
情報14号50mm/h、150mm/24h(~7日18時)
         
以降         8日5時51分、大雨警報解除、大雨注意報継続 8日13時、「避難勧告」に引き下げ

5日正午の段階では、福岡県内で予想されていた1時間雨量は40mm、24時間雨量は多い所で100mmというものでした。                                 実際には、1時間雨量はアメダス朝倉で100mm超、解析雨量では120mm以上、24時間雨量はアメダス朝倉で500mm超、北小路公民館で800mm超となりました。朝倉市の住民にとっては、不意打ちの豪雨だったといえます。朝倉市役所の対応は早く、14時26分の段階で、市内全域に「避難勧告」を出しています。

九州北部豪雨による死者

総務省消防庁資料より(8月21日段階)。60歳以上の死者が特に多かったことがわかります。60歳未満の例としては、消防団員の40代男性が崩落の犠牲となっています。また、お産の為に1歳男児と自宅に帰っていた20代の母親が亡くなっています。1人が筑後川で、5人が有明海で見つかっています。

天気予報(福岡管区気象台発表)

    7月5日(水) 7月6日(木)
    12時~ 15時~ 18時~ 21時~ 0時~ 3時~ 6時~ 9時~
筑後地方 卓越天気 くもり くもり くもり くもり
降水確率 40% 40% 60% 70%
   
10時36分
(11時予報)
くもり 所により夜のはじめ頃まで雨で雷を伴い激しく降る  雨夕方からくもり 所により明け方から朝雷を伴い激しく降る
12時44分
(訂正予報)
くもり 所により昼過ぎ雨で雷を伴い非常に激しく降る 雨夕方からくもり 所により明け方から 朝雷を伴い激しく降る

 

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