創造の方法学(高根 正昭著)
Date:2017.12.01
書名 「創造の方法学」
著者 高根 正昭
出版者 講談社
出版年 1979年9月
請求記号 080/8-553
Kompass 書誌情報
今年は、因果関係の本が人気である。例えば、伊藤公一朗著『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社)や、中室牧子?津川友介著の『「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)が2017年に出版された。前者は、日経?経済図書文化賞とサントリー学芸賞も受賞している。
いずれも、相関関係だけでなく因果関係をみなければ、本当に関係があるとは言えないことを主張している。広告と売上の関係といった事例を用いた説明はわかりやすく、ぜひ学生の皆さんにも読んでもらいたい。
しかし、実は上記の本の紹介ではない。紹介するのは、私が大学院時代に出会った本である。
私は研究の世界に入る前は広告会社で働いていた。当時のビジネスの現場では厳密な因果関係は必要がなく、クライアント(顧客となる企業)に対して、「関係がありそう」なデータを示して、説得できればよかった。
しかし、大学院で学ぶようになってからは違った。研究では、厳密な原因と結果の関係が求められる。その頃、先輩から勧められた本が、高根正昭著『創造の方法学』(講談社)である。出版は1979年と非常に古い。昔の新書のため字も小さく読みにくい。しかし、読んでいくうちにワクワクした。因果関係、仮説、記述、モデル、概念、変数といった、当時知りたかったことが詰まっていたのである。筆者は1963年にスタンフォード大学に留学し、そこで研究の方法論を学んでいる。
久しぶりに読み、改めて本書の価値を認識した。私はゼミで、仮説をたてて因果関係を検証するよう指導している。それなのに、古い本で読みにくいと思って、学生に勧めていなかったことを後悔した。研究を行う、論文を書く、研究発表をする、といった学生は、ぜひ一度手にしてもらいたい。必ず発見があることを保証したい。
経営学部 准教授 中野 香織