平成30年度 入学式 学長式辞
先月来、暖かな日が続き、本キャンパスの禅研究館前にたたずむ桜の大樹も、爛漫の桜花から新緑の葉桜へと装いを変え、みずみずしい若葉が、春のやわらかな日差しを受けて本日の入学式に彩りを添えています。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんがこのたび駒澤大学の一員になられたことを、教職員一同、心より歓迎いたします。また、皆さんを支えてこられたご家族をはじめとする関係者の皆さまに対しましても、お祝い申し上げます。
受験の重圧から解放され、晴れて大学生という、人生の新たなステージに立たれた皆さんの胸の内には、おそらく、喜びとともに、受験生の時とは異なる不安が芽生えていることと思います。しかしそれは、新入生の誰もが、大なり小なり抱く心境なのです。決して焦ることはありません。ワクワク感とドキドキ感の交錯した今の心境、この?初心?を忘れずに、これからの大学生活への歩みを進めていただきたいと思います。
さて、その歩みの第一歩が、先週行われた新入生オリエンテーションの様々な企画です。そこで受けた説明や配られた資料の内容をしっかりと理解し、疑問点は担当部署にて遠慮なくお聞きください。
このほど「駒澤大学開校130周年記念棟?種月館」が竣工し、皆さんのご入学と軌を一にして運用が始まりました。多彩な最新設備を具えた種月館の完成は、教場はもとより、アクティブ?ラーニング?スペース、コミュニケーション?スペース、多目的ホール、食堂?売店などの各種施設の充実をもたらし、授業のみならず、学園生活における利便性を、さまざまな面で大きく改善?向上させるものと期待されます。
種月館の完成はまた、本学が現在、大学運営の基本に据えている「学生ファースト」の方針を、一段と推進させることに繋がると思います。言うまでもなく、大学教育の使命は、学生を有為な人材として育て、世に送り出すことにあります。ここでいう「学生ファースト」とは、こうした社会に貢献し得る人材を育成するために、何ができるか、何をすべきかを、教職員が一体となって、考え、実行してゆく姿勢を意味しております。
この営みを、学生自身の立場に立って考えるならば、如何にしたら「主体的なものの見方?考え方」を身につけ、深めてゆくことができるか、ということになりましょう。
「主体的なものの見方?考え方」を鍛えるためには、まず、そうした見方?考え方を学生から引き出すための指導者側の創意と、それに呼応する形で、学生自身が自主的に調べ、考える学習態度を習慣化することが求められます。こうして得られた「考えること?調べることの楽しみ」への気づきが、やがて、目的を遂行するために何をすべきかを自ら考え、行い、その結果を自らの責任で受け入れるという「主体性」をはぐくみ、深める方向へと導いてくれるでしょう。大学で学んだ知識?技能も、卒業後皆さんが向き合う社会的状況に即して如何に応用し、活用し得るかで、その実践的価値が決まるのです。
そのことを、?仏教の教えと曹洞宗立宗の精神?にもとづく本学の?建学の理念?に引き寄せて捉えるならば、適確な状況判断を下す?智慧?と、他者や周囲を思いやる?慈悲?の心を身につけ、実践することと言えましょう。
これまで述べてきましたように、大学における教育の主要なねらいは、学生の「自主的なものの見方?考え方」を育て、それをさらに?主体的なものの見方?考え方?へと発展させること。そして、自由を享受するとともに責任も負う、あるいは精神的経済的自立とともに社会との共存の意義も知る、そのような人材を世に送り出すことにあると言えます。駒澤大学での学びを通して、皆さんが、教養並びに専門的知見を修得するにとどまらず、?智慧?と?慈悲?の心を身に付け、行動できる有為な人材へと成長することを念願しています。
これから始まる大学生活は、皆さんの内にたぎる青春のエネルギーを、さまざまな形で受け止めてくれるでしょう。正課授業、サークル活動、アルバイト、あるいはそれらを通して体験する多くの人たちとの出会いや交流など、その形は多種多様です。いずれにせよ、皆さんに留意してほしいのは、熱き情熱と冷静な心を共に大切にするということです。
人生は、一回限りであり、今日という日は、二度と経験できない時間です。皆さんが、熱意と慎重さを合わせ持ち、充実した実りある大学生活を築かれることを祈念して、私の式辞といたします。
ご入学、誠におめでとうございます。
平成30年4月9日
駒澤大学 学長 長谷部 八朗