学長より卒業生の皆さんへお祝いのメッセージ

Date:2020.03.23

はなむけの言葉―卒業式の式辞に代えて

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駒澤大学 学長 長谷部 八朗

卒業生?修了生の皆さん、ご卒業?ご修了おめでとうございます。併せて、ご家族をはじめ、関係者の皆さまにもお祝いの意を表しますとともに、日頃の本学に対するご支援に対し、厚く御礼申し上げます。

今年度の学事暦では、3月23、24日の両日、桜花が開き春色に包まれた駒沢キャンパスにおいて卒業式の式典を挙行し、教職員一同、皆さんの晴の門出をお祝いする予定でありました。しかしながら、昨年末以来の新型コロナウィルスの感染が国内外で拡大し、いわゆるパンデミックの様相を呈するに至った状況に鑑み、濃厚接触の無きよう配慮して学位記交付は行うものの、卒業式の式典はやむなく中止することにいたしました。それは苦渋の選択でありましたが、この日を心待ちにし、準備されてきたであろう卒業生やご家族の皆さまのお気持ちを察するとき、まことに心苦しく、申し訳なく思っております。実は私自身も卒業式の急遽取り止めという異例の事態の中で大学を卒業した経験があり、皆さまのそうした心情は痛いほど分かります。

卒業式は、人生の主要な節目をかたどる儀礼の一つであり、まして大学の卒業式は、多くの卒業生にとって、学生の立場を離れ社会人として新たにスタートすることをみずから自覚し、また他者に表明するための象徴的な舞台装置といえましょう。もとよりはなむけの言葉のみで、そうした儀礼の役割を果たせるものではありません。しかし、このメッセージを通して、社会に巣立つ皆さんの背中を少しでも押すことができれば幸いです。

さて卒業生の皆さん、駒澤大学における学園生活はいかがでしたか。目を閉じれば、楽しい想い出もほろ苦い思い出も含め、さまざまな場面が回り灯籠のように脳裡に浮かんでくることでしょう。正課や課外の活動、あるいはさまざまな人たちとの出会い?交流を通して皆さんは、「社会人基礎力」、すなわち「職場や地域社会の多様な人間関係の中で仕事を行っていくために必要な基礎的能力」を身に付けてこられたのです。皆さんはまだ、こうした能力の習得を自覚的に認識しているわけではないと思います。しかしこの力は、皆さんの内に蓄えられ、やがて随所に顕現するでしょう。専門?教養にわたる多彩なカリキュラムの履修を通して、卒業必要単位の修得という高いハードルを見事にクリアーした事実が、そのことを如実に物語っています。

21世紀に入って20年目の区切りを迎えた今年、皆さんは新たなステージに立つわけですが、時代は混迷の度を増し、ますます先行きの不透明な様相を呈しております。このような状況下で新社会人としての船出をする皆さんの前途には、予期に反した困難も種々待ち受けていると思います。その一方で、予期せぬ、あるいは予期した以上の成果が生まれるかも知れません。近年、「創発」という言葉を目にする機会が増えた印象を受けます。個々人の能力の組み合わせの如何によって、個々人のレベルでは思いも寄らなかった成果を生む現象を指します。文部科学省は、新たな知の創造?継承?活用を社会発展の基盤とする「知識基盤社会」を構築する上で高等教育の果たすべき役割を提言していますが、混迷する時代と向き合う大学に課せられた第一の使命は、正にこの「創発」的な思考の営みを担い得る人材の育成でありましょう。

駒澤大学の人材育成の基本方針は、いみじくも、こうした時代の要請に適ったものといえると思います。なぜなら、「仏教の教えと禅の精神」を建学の理念に据えた本学における「知」の捉え方は、学んだ知識をもとに、他者や社会に応用?貢献する「智恵」の醸成をめざすことに置かれているからです。

ライフステージの新たな、しかも大きな転換点に立った卒業生の皆さんには、これからも本学のブランドスローガンである「しなやかな、意思」を念頭に据え、「創発力」豊かなものの見方?考え方を磨いて行かれるよう念願しております。

最後になりますが、卒業生?修了生の皆さんを物心両面にわたり、陰に陽に支えてこられたご家族や関係者の皆さまに対し、謹んでねぎらいと感謝の意を表します。

令和2年3月23日、24日
駒澤大学 学長 長谷部 八朗