令和3年度 学位記授与式(卒業式)学長式辞
学部卒業生の皆様、大学院修了生の皆様、ご卒業、そしてご修了、おめでとうございます。また、御家族をはじめとする関係者の皆様には、心よりお祝い申し上げます。こうした対面での卒業式は3年振りとなりますので、とても感慨深い気持ちです。
晴れて学位記授与の日を迎えられた皆様のご祝辞でありますが、それに先立ち、皆様と共有したいことがございます。今般のロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻について、一言述べさせていただきます。
「仏教の教えと禅の精神」を建学の理念に掲げ、「智慧と慈悲を一身に具える人材の養成を目的に教育?研究活動を行っています本学は、すべての生きとし生けるものにとって、命は等しく尊く、かけがえのないものとして考えています。その尊い命を奪い合う行為に憤りを覚えるとともに、一刻も早く平和がもたらされることを願ってやみません。本学で学んだ皆様とともに、この度の戦禍により命を落とされたすべての方々に深く哀悼の意をささげ、お見舞いを申し上げます。
さて、今年卒業する皆さまの4年間を振り返れば、まさに新型コロナウィルス感染症による苦しい経験に終始したことだったと思います。3月21日、まん延防止等重点措置が解除されましたね。日本で最初に新型コロナ患者が報告されたのは、2020年1月16日のことでした。2年2か月が経ちました。学部の皆様は、大学2年の定期試験の頃からということになりましょう。以来、世界中の人々が、コロナと共存する日々でした。ゼミ合宿もサークルの合宿も中止。打ち上げやコンパも中止。友人との旅行も中止と、忍耐を続ける学生生活だったかもしれません。
しかし、いま、今日のこの日を迎え、振り返ってみますと、歴史の中で100年に一度程度繰り返されてきたウィルスと人類の闘いの「当事者」であったという経験は、100年に一度ほどの希少価値ではないでしょうか。先人たちが経験した過去の出来事に、私たちも当事者として寄り添う気持ちが生まれたのではないかと思います。皆様だからこそ経験できた気付きは、数えきれないのではないでしょうか。困難を極め、苦しかった経験は、考え方次第で、これからの人生の中で大きな糧になるでしょう。皆様には、世界中の学生がコロナ禍を通して感じたこと、あるいは発見したことを共有し、共感し、ともに新しい未来を創造して欲しいと願っています。
卒業生の皆さまの将来を展望するにあたり、現在の世界及び日本を見渡せば、その向かうべき方向性が見えてまいります。今回のコロナ禍でも露呈しましたが、今の日本は先進国の中で遅れをとってしまった分野があります。
1つは、「デジタル化」です。新型コロナ感染症対応では、日本のデジタル化の遅れ振りが浮き彫りになりました。学校のデジタル化において、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国37か国の中で最下位でした。大学で専門とした学問が何であろうとも、これから社会に出る皆様にとって、「デジタル技術」は、生きていく上で必須の「道具」です。世界に生きる人々と繋がるためには、先端の「道具」を楽しんで使いこなして、生き方や働き方の幅を広げてください。
もう1つは、「ダイバーシティ」です。毎年、世界経済フォーラムが世界各国の男女平等の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」を発表しています。156か国中120位という環境は、一日も早く卒業しなければなりません。ダイバーシティ(多様性)とはそもそもジェンダーという属性だけではありません。多様性の中で最もわかりやすい項目が先進国の中で最下位であることを、皆様は常に頭に置いていただきたい。
本学は、ダイバーシティ(多様性)の尊重による「個を活かす」大学を目指しています。これはSDGs(持続可能な開発目標)の達成や、共生社会の実現につながり、グローバル社会で生きていく上での不可欠な取り組みです。いよいよ社会に旅立つ卒業生の皆様は、「デジタル化の推進」と「ダイバーシティの尊重」といった社会課題を意識して、個々に活躍される分野でどうか深く掘り下げてください。
世の中はますます変化の激しい時代を迎えます。将来の予測が困難な状況を示す「VUCA」(ブーカ)という造語を頻繁に目にするようになりました。「VUCA」とは、「動的で複雑、不確実で曖昧」という意味を表す造語です。Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字を繋ぎ合わせています。駒澤大学を卒業される皆様は、このVUCAの時代を力強く生きる「"智慧と慈悲"の精神」をもち、「しなやかな、意思。」を身に付けています。自信をもって大海に乗り出してください。迷った時には、大学時代の友人やゼミの先生を思い出し、連絡してはいかがでしょうか。
駒澤大学は日本各地に同窓会支部があり、皆様をいつでもサポートしています。先月、私もオンラインで参加する機会があり、全国各地の同窓生の皆様とお話をすることができました。また世界各国にも同窓会が立ち上がり、海外に出る皆様の力になります。コロナ禍を経て図らずも身に着いたオンラインという道具を使って、駒澤大学の中にも外にも、皆様が頼りに出来る場を構築したいと思っています。皆様も是非、そのネットワークを作る力になってください。そして一緒に未来の社会を作りましょう。
改めまして、お祝い申し上げます。ご卒業おめでとうございました。
以上をもちまして私の式辞といたします。
令和4年3月吉日
駒澤大学学長
各務 洋子